葉桜の季節に君を想うということ「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野 晶午 著数々のミステリ賞を獲得した作品。 警備員からパソコン教室の先生まで何でもこなす自称「なんでも屋」の主人公トラちゃんの一人称で語られる探偵物語。 高齢者を毒牙にかける悪徳(霊感・SF)商法を暴くというメインストーリーにラブストーリーが重なり、これに過去のエピソードであるヤクザの世界が語られる。 前々から、この作品には仕掛けがある、と聞いていたので、3ケ所程、三人称で記述された箇所に何か秘密があるのか、それともこの一人称の記述が、ひょっとしたら「ロートレック荘」的叙述トリックなのか、と色々考えてみたが、結局、ラストで見事に騙されてしまった。 1ページの最初のセンテンスが全てを誘導する布石だったのだ。 映像化は絶対不可能。小説でしか味わえない作品だ。 軽快な語り口に似つかわしくない、この詩的なタイトルは、ラストまで読んで初めて判るというもの。 同じミステリマスターズの西澤保彦作品と比較して読むべし。 葉桜の季節に君を想うということ |